軽くて強い 車内でも使用OK

きっかけは東日本大震災でした。

東北に住む友人から震災後は住居・食料・衣類などさまざまなものが不足しましたが、そのなかでも「トイレの不足が深刻」と知ったことが開発のきっかけです。

自宅が倒壊したり、避難場所に入りきれない方など、自動車内で過ごした方も多かったようです。 そこで車の座席でも使用できるということを第一条件として、開発をはじめました。

試作期間は2年に及びました。

最も配慮したのは「組み立てやすさ」です。
緊急時は焦ってしまい、うまく組み立てられなしことがあります。私自身、試作段階では急ぐと上手く組み立てられないこともありました。
多くの意見を取り入れ単純化をはかりました。

最終的に、差し込んである中板を組たて時に引き起こし、左右に開き、携帯時に使用の金具付ゴムバンドで固定する構造にたどりつきました。
便座自体はたたんだ状態で厚み約1.5cm、45×30センチ四方とコンパクトながら、数秒で組み立てられるようになりました。
さらに重要なポイントとなる素材については何度も検討を重ねました。 sample

重量・折りたたみ・使用後の廃棄等を考えると材質は段ボール紙となりますが、市販の簡易トイレで採用されている段ボール紙は強度が弱く繰り返し使うと安定性が損なわれてしまいます。

そのため、紙のあいだに接着剤を入れて貼り合わせた、多層構造の特殊な板紙をつかうことで、十分な強度を得ることができました。

中板の形は開孔部に沿って鼓状にすることと、対角線状ダイアゴナルに配置することで、強度が増しました。
中板の組み立てをより早くできるように、端部を8箇所切り落とすなど、頻繁に改良を加えています。

トイレは座って使用するため、体重の大部分がかかります。大きな大人の男性を想定すると、やはり体重100kgくらいまで考えなくてはなりません。 試行錯誤のすえ、開発できたのがこの簡易トイレです。 ぜひ非常時のストックとしてご準備いただければと思います。

いしかり紙工有限会社 小澤和郎